タタミ王国物語


 − 白いハト −

ある朝、皆でいつものように集まり楽しく話していた。

「グルグルって、あまり話さないのかな?」

ピースはグルグルが気になっているようだった。オモテが

「公園で歩き回る姿しか見たことないな〜
ホンマ君何か見たことある?」

「僕も歩き回る姿しか知らないな…
そう言えばハトに話し掛けてるかな。」

ウランが、

「鳩にごはんだよ〜って呼び掛けてた。そしたら鳩がグルグルのまわりに寄ってくるんだ。」

カオリの横にニコニコと笑顔でミユキが寄ってきた。


「おはよう!ミューミュー」

「おはよう、カオリちゃん」

ミユキは、ちょっと変わっており可愛いもの、他の皆とは“変わった可愛いもの”が異常に大好きだ。皆にはミューミューと呼ばれている。

たまにこの“変わった可愛いもの”に困らされる事もある。

かおりの近くに寄ってきて小声で言った。

「かおりちゃん、後で見てほしいものがあるんだけど…」

「ミューミューなに?」

「それはぁ〜とっ〜ても綺麗でかわいいものよ!」

カオリは直感で、これは又何かあると思った。

「うん、いいわよ。」

「とっ〜ても綺麗なの
、楽しみにしててね。」

ミューミューのいつも以上のうれしそうな顔を見て少し心配になった。

カーン、カーン、カーン…

そして放課後

「カオリちゃんこっちよ。」

「ミューミュー何処に行くの?」

「裏の倉庫よ。」

学校の裏にある倉庫には、使ってない黒板、机、体育で使うマット等、いろんなものがしまってあった。

すると、ミューミューがその中から小屋をズルズルと引っ張り出してきた。見覚えのあるその小屋は、去年まで皆で飼っていたウサギがいたのだ。でも病気で死んでまった。

「ミューミューそのウサギ小屋に何か入ってるの?」

カオリは心配そうに聞いた。

「そうなの。」

うれしそうに小屋をズリズリと引き出してきた。

「それって鳥?」

明るい方へ小屋が出てくると何かが暴れている。

ホロッホ〜ホ〜ロッホ〜

「ハト?」

小屋の中でバサバサと羽をバタつかせている。

ホ〜ロッホ〜ホ〜ロッホ〜


「そうなの。かおりちゃんよく見て!白い色は公園ではこのハトだけよ。目も大きくクリッとしてかわいいの。」

「ミューミュー…
どうやって捕まえたの?」

「罠を仕掛けたのよ。」

カオリが見た感じでは、白は白でも、羽の部分にグレー混じりの色で、目も大きいが“可愛い”とはちょっと違うような気がした。

「ミューミュー、このハトは綺麗で可愛いと思うけど、公園に帰してあげたほうがいいと思うわ。」

「いいえ、私が今日から飼うのよ!やっと捕まえたんですもの。名前もつけたのよ。アンジェって言うの。素敵でしょ?」

ホ〜ロッホ〜
    バサバサバサ…   バサバサ    バサバサ

カオリは、白にグレーのブチのハトが助けを求めているようだった。自分ひとりでは手に終えないような気がした。

「皆にも紹介するってのはどうかしら?」

「私のアンジェを皆に紹介しなきゃね」

カオリは早く白にグレーのブチハトを公園に帰したかった。

オモテとウラン、ピースが帰ろうとしてたとこをカオリが引っ張ってきた。

「カオリちゃん、ミューミューまた何か見つけたの?」

オモテは半分面白がって聞いた。彼女には、前科があった。

「今回は、白にグレーのブチバトよ!」

ミューミューはハトを抱いていた。

抱くというよりは逃げないようにしっかりとつかんでいる感じだ。

「みんなに紹介するわね、私のハトのアンジェよ、よろしくね。」


ホ〜ロッホ、ホロッホ〜
           バサバサ…  バサバサ ホロッホ〜

今にも暴れて逃げ出しそうだ。

「あ〜このハト、“たみお”にそっくりだ。」

ウラン君がハトに向かって指をさした。
ミューミューが強い口調で言った。

「たみお?違うわ〜アンジェよ!」

「公園からミューミューが捕まえてきたのよ。」

小声でカオリが付け足した。

「公園なら“たみお”だよ。間違いない。グルグルが可愛がってるハトの中の一羽だよ。」

「ミューミュー返したほうがいいよ。グルグルが探してるかもしれない。」

オモテが言った
小さい声でピースとウランががクスクス笑いながら、

「たみおって顔してるね。」

するとミユキが怒りだした。

「そんな名前も付けるなんてかわいそう。アンジェ帰りましょう。」

ハトを抱き抱えて帰ろうとした時、学校の前をウロウロしているグルグルに気付いた。

「どうしよう…」

クルット向きをかえ、倉庫の方へ戻った。

「ミューミューどうしたの?」
オモテが聞いた。
「グルグルが学校の前にいたの。」

「いつもの時間にたみおの姿が見えないから探してんじゃないかな〜
ミューミュー返してきたほうがいいよ!」

ウランが言うと続けてピースも

「グルグルもこのハトを可愛がってるんだよ、いなくなったから心配してるんじゃないかな〜」


「私、見てくる。」

カオリが様子を見に行った。

様子を見ると、グルグルはやはりたみおを探しているようだった。
ずっとグルグルは学校の方を見ている。
ミューミューが捕まえたのを見ていたのかも知れないと思った。

すぐ戻ってミューミューに聞いてみた。

「私わからない…
アンジェ捕まえるので必死で。どうしよう〜」



ミユキは今にも泣きそうだ。

みんなも困り果てていた。オモテはお腹を抱えて笑っていたが,、さすがにもう笑えなくなっていた。
ウランが言った。

「ミューミュー、やっぱりたみおは公園に返したほうがいいよ。“たみお”は自由にしてあげたほうがいいよ。ずっとあの公園にいるから何処にも行かないと思うよ。」

ホロッホ〜 ホロッホ〜!!
“たみお”も力強く泣き続けた。

「もっと素敵な物があるわよミューミュー。」

カオリも説得するが、“たみお”をしっかりと抱き締めた。

外ではグルグルがたみおを探して、学校の前を動かない。だんだん日も暮れてきた。

「僕たちおなか空いてきたな〜帰ろうかな〜」

とオモテが一言。
するとミユキが泣き出した。カオリが続けた。

「ミューミューもお腹すいたでしょ?今日は帰ろうか…」

「アンジェはどうするの?」

「抱いて学校から出れないから、小屋に入れておくのよ!」

少し後悔の思いもあってか、すぐにニッコリ笑って、
「そうね…そうする!持ってる餌をあげて帰るわ。」

カオリは小声で、

「オモテ君、私ミューミュー連れて帰えるから、“たみお”を外に出してあげて。」

「えっ、そんなことして大丈夫?」

「なんとかなるわよ!」

ミユキの気に入りそうな物は無いか考えながら…このままではどうしようもない。カオリはこの後じっくり考えようと思っていた。

ホ〜ホロッホ〜

「私はミューミューと帰るわね。」

「カオリちゃんミューミューまた明日ね〜」

「また明日〜」

2人は何事も無かった様に学校を出た。グルグルを見ないようにして横をスタスタと歩いて帰った。

「2人とも帰ったよ。僕たちも帰ろうよ。」

ピースが言うとオモテが

「最後の一仕事だ!“たみお”を自由にしてあげるんだ。」

ピースが慌てて
「えっ〜でもミューミューは明日どうなる?又大変だよ〜」

ウランが言った。
「何かミューミューの気に入りそうな物がないかな、“変わった可愛いもの”が好みだからな…」

そして、ミユキの言うアンジェ=“たみお”はまた自由になった。


大きな課題を残したまま、1日が終わった。

  ホ〜ホロッホ〜

      ホ〜ホロッホ〜

              ……


グルグルは、自由になった“たみお”見つけていつものように公園で楽しそうにハト達に餌をあげていた。


明日はいったい…




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〜タタミ王国物語〜
第一章
〜タタミ王国物語〜
第二章

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